がんの緩和ケア
鍼灸治療におけるがん緩和ケア
がんそのものによる苦痛や手術、抗がん剤、放射線治療の副作用によって様々な症状が引き起こされます。 これらの症状を抱える患者さんに対して、鍼灸はどのような治療が出来るのか、何に期待出来るのか。 WHO(世界保健機関)に認められる鍼効果、厚生労働省の研究班が作成した「がんの補完代替医療ガイドブック」から まとめると、①痛みの緩和(鎮痛効果)②抗がん剤などの副作用の軽減③免疫効果を高める、自然治癒力を向上させる ④心理的、精神的苦痛を軽減させる などが考えられます。
当院の治療
主に抗がん剤などの副作用を軽減、免疫力を高めることに力を入れています。
抗がん剤の副作用として多く見られるのは、体の痛みや手足の痺れ、はきけ、嘔吐、食欲不振、下痢、便秘、咳、息苦しい、 動悸などの神経障害、胃腸、呼吸、循環器機能障害の症状です。中医学の立場から見るとこれらの症状は、過酷な治療で 正気が大きく損傷されてきた症状です。正気というのは、体の本来の機能や免疫力、治癒力を支える主要なもので、 気血、津液、精気からなる物です。治療として、漢方、鍼灸をはじめ、いかに正気を回復させ衰えた働きを正常にするかが 治療の目的あるいは目標になります。
鍼灸治療には補穴の使用がポイント
補穴の使用と同時に、正気損傷による気血不通の症状を改善し気血の流れを促す行気活血穴、また各症状に対応する治療穴も 併用されます。一般的に知られる補穴は、足三里、関元、気海、命門、背兪(心、肺、肝、脾、腎兪)、百会などがあります。 これらの穴の治療で体力の増強、食欲の回復、良質な睡眠、白血球増加、貧血改善などの臨床結果が得られています。 気血の流れを良くする穴として、期門、陽陵泉、膻中、太衝、血海、膈兪。また各症状に対応する穴として、食欲不振、吐き気には、 内関、中脘、足三里。下痢、便秘には、天枢、上巨虚、支溝、曲池。咳、息苦しいには、尺沢、太淵、中府。動悸、息切れには、 内関、間使など。不眠や不安などの精神症状には、神門、神庭、四神聡、百会。つまり本治法と標治法を併行します。 がん治療に様々な症状の緩和や生活の質の改善、免疫の向上などに鍼灸の効果が発揮できます。